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高速からの急制動

【カギは反応時間】

 

カギは反応時間すでに、「最短停止距離は路面ごとのグリップに比例し、クルマの速度の2乗に比例して長くなる」ということを学びました。また具体例として、グリップ係数10の乾いた路面を60km/hで走行しているクルマは最短距離141mで止まることができますが、速度が120km/hになるとそれが一挙に566mまで延びてしまうことも知りました。けれども、これはクルマについてだけ言えることで、それにはドライバーの反応時間は考慮されていません。そして、反応時間はドライバーがあらかじめその緊急事態を予期していたのかどうか、またブレーキを使うことに対して心の準備ができていたかどうかによって、大きく変化するのです。

 

予期さえしていれば、反応時間は僅かコンマ5秒ということもあり得ますが、もしそうでなかった場合は、アクセルペダルから足を離し、ブレーキをしっかりと踏むまでに優に1秒以上も掛かってしまうことがあります。これでは停止距離が大きく延びてしまっても不思議はありません。以下にいくつか例を掲げてみましょう。

 

 

 

アッという間にこれだけ走る

 

60km/hで走っているクルマは、秒速にすると1 秒間に167m進むことになります。ですから、常に注意深く運転しているドライバーでさえ、反応時間が05秒だとするとそのあいだに83mも空走してしまうことになります。結局、実際に止まるまでの距離はこの空走距離83m+ブレーキが掛かってからの制動距離141mの合計で224mが必要だということです。これが注意力散漫なドライバーだとさらに距離が延び、反応時間が1秒の場合は空走距離167m十制動距離141mで308mと、もはや空走距離が半分以上を占め、せっかくブレーキの性能が良くても、その効果を帳消しにしてしまうほどなのです。

 

同様に、120km/hで走っているクルマでの反応時間05秒は空走距離にして167m、同1秒は 333mに相当するため、 トータルの停止距離はブレーキによる制動距離566mを加えて、それぞれ 733mと899mになります。

 

 

 

簡単には止まらない

 

あくまで理言命上の話ですが、いま同じ車線を同じ速度で相前後して2台のクルマが走っていたとします。仮にそれらのクルマが同じくらいのブレーキ性能を備えているとすれば`、安全な車間距離のカギを握るのはドライバーの反応時間です。そこで反応時間1秒を基本とし、さらに20%の余裕を見込んで計算すると、120km/hで走っている2台の間には少なくとも40m(空走距離333mの12倍)の車間距離が、また、もしそれが200km/hなら少なくとも666m(555m× 12)の車間距離がなければなりません。

 

ドイツならともかく、日本で200km/hというのはあまりに非現実的な数字ですから、あくまで参考にしかならないのですが、とにかく200km/hで走ってぃるクルマが急に止まるとなると、いったいどのくらいの距離が必要なのでしょうか?グリップ係数はどんなに天気が良くても10以上にはなりませんから、1秒間の空走距離555mに制動距離 1572mが加わり、 トータル2127mが必要なのです。しかも忘れてならないのは、これはあくまでドライバーの技量や路面状態が理想的に作用したときの距離であることです。

 

これらの例が如実に示してぃることは、クルマのスピードが増せば増すほど、 ドライバーがいかに遠くまで注意して見ていなければ`ならないかということなのです。同じことは雨の日にも言えます。ふだんは例外的にグリップの良い路面でも、濡れると途端にグリップ係数が低下して08くらいになってしまいますし、アスファルトの舗装が古かったりすると 06前後まで一気に落ちてしまうのです。当然、制動距離は20%〜 40%も増えてしまいます。